薬膳のお話・中医学の基礎【精・氣・血・津液】
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- 薬膳初心者
- 薬膳を基本から学びたい人
- 中医学に興味がある人
目次
『精・氣・血・津液』とは
中医学において、『精・氣・血・津液』は人体を構成し、臓腑・組織・器官の機能を活性化させ、生命活動を維持する重要な物質です。
そしてこの4つの変化を診ることで、対象に合った薬膳レシピを作ることができます。
①精
精とは両親から受け継いだ精微物質と食物から摂取する営養物質である水穀精微によって作られたものです。
精の分類
精には生殖能力をもつ精と精微物質の精の2つがあります。
・生殖能力をもつ精
腎精(腎に貯えられる精)の中で生殖能力をもつもの。
生まれつきあるもので、発育・成長・成熟すると、妊娠・生育・繁殖の役割を果たします。
・精微物質の精
自然界や体内のすべての精微物質も精と呼びます。
臓腑の精、水穀の精、血、津液、髄、自然界の精微物質など。
精の生成
生まれつき両親から受け継ぎ、腎に貯蔵される精微物質を先天の精、脾臓のはたらきによって水穀から生成される水穀精微を後天の精といいます。
先天の精は人体を構成し臓腑をはたらかせる基本的な精で、後天の精から精を絶えず補充されます。
精の生理機能
・生命の維持と繁殖
精から氣が作られ、氣はそれぞれの臓腑に送られ、臓腑を機能させて生命を維持します。精を養うことで体は発育し性機能が成熟します。
・体の滋養
体の滋養は腎精に関係しています。
例えば、腎精によって骨髄を補充をされると骨は強くなり、歯も丈夫になります。このように、精の滋養作用によって臓腑組織は養われ、その機能を発揮できるようになります。
・氣血の化生
精は氣と血を生成します。腎精から元氣が生まれ、各臓腑の気のもとになります。
精から血を生成することを精血同源といいます。
②氣
氣とは自然界を構成する物質で、臓腑の生理機能のことでもあります。
人を含む自然界すべての物質は、氣の運動(氣機)とその変化によって、誕生し、活動し、存在するとされています。
氣の分類
・基本の氣
基本となる氣には元氣(げんき)・宗氣(そうき)・営氣(えいき)・衛氣(えき)の4つがあります。
臓腑 | 生成 | 分布 | |
---|---|---|---|
元氣 | 腎 | 生まれつき腎精から生成され、その後は脾胃からの水穀精微からも養われる | 臓腑・筋肉・皮膚 |
宗氣 | 脾胃肺 | 水穀精微と新鮮な空気から生成される | 肺・心・胃 |
営氣 | 脾胃 | 水穀精微から生成される | 血脈内、血液の一部 |
衛氣 | 脾胃 | 水穀精微から生成される | 血脈外、体表・臓腑 |
・臓腑の氣
臓腑のはたらきのことを臓腑の氣と言います。
臓氣・・・肝氣、心氣、脾氣、肺氣、腎氣
腑氣・・・胆氣、小腸氣、胃氣、大腸氣、膀胱氣
・経絡の氣
経絡は氣や血の通り道で、太い経絡と細い経絡があります。
指圧やマッサージ、お灸などで経穴(ツボ)を刺激し、氣の通りをよくする方法があります。
氣の生成
氣の生成には以下の3つの方法があります。
・生まれつきある腎精から生成される
・脾胃のはたらきにより食物(水穀)から生成される
・肺の呼吸による新鮮な空気と水穀精微により生成される
氣機
氣の運動を氣機といいます。
氣の運動には昇・降・出・入の4つがあり、全身で生命活動を維持しています。
氣の生理機能
氣は以下の6つの生理作用で臓腑を支えています。
・促進作用
体の発育と成長、それぞれの臓腑や組織のはたらきを促進します。氣によって血は生成され、血流が生まれ、津液の生成・分布・排泄を促します。
・温煦(おんく)作用
氣は体を温め、体温を保ちます。これにより臓腑や組織の機能が正常に保たれます。
・防衛作用
保護作用とも言い、氣が体表を巡って邪気の侵入を防ぎ、病気から身を守ります。
・固摂(こせつ)作用
氣の力によって内臓の位置を固定し、精・血・津液をコントロールして、汗・唾・尿など体液の管理も行います。
・氣化作用
食物と空気を水穀精微に変え、精・氣・血・津液を作り、汗・尿・便に変化させるような新陳代謝の過程のこと。
・営養作用
血と一緒に流れる営氣が、臓腑や組織を潤し、体温をコントロールし、臓腑を養うこと。
③血
血は生命活動を維持する血脈(血管)に流れる赤色の液体こと。
血の生成
血は腎精から生成され、これを精血同源といいます。
水穀精微や津液からも血は生成されます。
血の生理機能
・補養作用
水穀精微から生成された血は営養を豊富に含んでおり、臓腑や組織に営養を供給します。
・養神作用
血により、精神を養います。血が充実すると氣も充実するので、精神も安定し、意識が明晰になります。
④津液
津液は人体内の正常な水液の総称で、臓腑や組織の体液と分泌物のことを言います。
津液の津は薄い水液で流動性があり、液は濃い水液で流動性がありません。
津液の生成
津液は臓腑の作用により以下3つの方法で生成されます。
・脾胃、小腸、大腸の消化機能により、食物から生成
・肺氣と腎氣の気化作用により生成
・血が津液に変化する津血同源により生成
津液の生理機能
・滋養作用
皮膚・毛髪・臓腑を潤します。
・潤滑と保護作用
関節・目・鼻・耳・咽喉を滑らかに保ちます。
・補充作用
骨髄・脊髄・脳・関節に津液を補充し、血液の一部になります。
・排泄作用
汗・尿・便と一緒に代謝後の不純物を排泄します。