薬膳のお話・食薬学【食薬の性質と味】
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- 薬膳初心者
- 薬膳を基本から学びたい人
- 食薬の性質と味のはたらきを知りたい
目次
食薬の性質は『寒性・涼性・温性・熱性・平性』の五氣、食薬の味は『酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味・淡味』の六味に分類され、それぞれはたらきが異なります。
また、五氣六味の前に『微』がつく場合はややその性質がある、『大』がつく場合は大いにその性質があることを表します。
5つの性質『五氣』
『五氣』とは、食薬がもっている『寒性・涼性・温性・熱性・平性』の5つの性質を指し、五性とも言います。
寒性
『寒性』とは体を冷やすはたらきをする性質です。
これらの食薬は、声が大き・顔が赤い・多汗・食欲が旺盛・便秘というような陽盛体質、発熱・顔が赤い・喉が渇く・黄色の痰が出るというような熱証を治療、改善します。
涼性
『涼性』とは体を冷やすはたらきをする性質で、寒性よりも緩やかに作用します。
これらの食薬は、寒性と同じく、声が大き・顔が赤い・多汗・食欲が旺盛・便秘というような陽盛体質を改善し、微熱・のぼせ・ほてり・手のひいら、足の裏の熱感・不眠というような陰虚体質や高熱後の回復期を治療します。
温性
『温性』とは体を温めるはたらきをする性質です。
これらの食薬は、疲れやすい・声が小さい・食欲不振・冷え性といった気虚体質・陽虚体質、悪寒・発熱・頭痛・体の痛み・手足の冷えなど寒証を治療、改善します。
熱性
『熱性』とは体を熱くさせるはたらきをする性質です。
これらの食薬は、冷え性・生理痛のような陽虚体質、冷え・下痢・痛みなどの寒証を治療、改善します。
平性
『平性』とは寒性・涼性・温性・熱性などとは違い、はっきりとした性質がないものを指します。そのため他の食薬と合わせやすく、他の性質を緩和するはたらきもあり、使いやすい食薬になります。
【五氣(五性)のはたらきと食薬】
五氣 (五性) |
はたらき・効果 | 体質 | 証 | 食薬 |
---|---|---|---|---|
寒性 | ・最も体を冷やす作用が強い ・喉の渇きや痛み、発熱を改善 ・潤いを与えて便秘を改善 ・解毒作用 ・夏バテ予防 ・冷えのある場合は食べ過ぎ注意 |
陽盛体質 | 熱証 | トマト/苦瓜/蓮根/筍/アロエ/菊花/すいか/柿/バナナ/しじみ/ハマグリ/カニ/昆布/豆腐 |
涼性 | ・寒性より緩やかな体を冷やす作用 ・微熱やほてり、のぼせを改善 ・鎮静、消炎、解毒作用 ・体を潤す ・冷えのある場合は食べ過ぎ注意 |
陰虚体質 陽盛体質 |
熱証 | きゅうり/大根/冬瓜/セロリ/なす/なし/びわ/小麦/大麦/そば/緑豆/砂糖/薄荷/ウサギ肉 |
温性 | ・熱性より緩やかな体を温める作用 ・気血の巡りをよくして冷えを改善 ・胃腸を温めて、疲労回復 ・のぼせやすい、熱がこもりやすい場合は食べ過ぎ注意 |
気虚体質 陽虚体質 氣滞体質 血瘀体質 |
寒証 | かぼちゃ/栗/くるみ/生姜/みょうが/ニラ/ネギ/さくらんぼ/もち米/紫蘇/八角/エビ/鶏肉/酒粕 |
熱性 | ・最も体を温める作用が強い ・冷えによる胃腸や関節の痛みを改善 ・寒い季節に効果的 ・のぼせやすい、熱がこもりやすい場合は食べ過ぎ注意 |
陽虚体質 | 寒証 | ピーマン/ニンニク/山椒/こしょう/唐辛子/乾姜/羊肉/肉桂 |
平性 | ・体を温める作用も冷やす作用もない ・体質、季節を問わず食べられる ・常食できる ・他の性質の食薬と合わせやすい |
陽盛体質 陰虚体質 血瘀体質 氣虚体質 陽虚体質 |
熱証 寒証 |
キャベツ/白菜/芋類/豆類/ゴマ/湯葉/なつめ/いちじく/とうもろこし/うるち米/鴨肉/シラウオ |
6つの味『六味』
『六味』とは食薬がもっている『酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味・淡味』の6つの味のことをいいます。
※ただし、この『味』というのは、臓腑への効能で決められているので、実際に食べた時の味とは異なる場合があります。
また、1つの食薬に複数の味が分類されている場合もあります。
酸(渋)味
『酸味』には、多汗・動悸・慢性の咳・下痢・頻尿・遺精などの症状を改善する作用があります。
ほかに、酸味とほとんど同じ作用をもつもので『渋味』があります。
苦味
『苦味』には、多汗・熱感・口の中が苦い・口内炎・排尿痛・血尿・便秘などの症状を改善する作用があります。
甘味
『甘味』には、虚弱な体質・脾胃が弱い・慢性の痛みなどの症状を改善する作用があります。
辛味
『辛味』には、冷え性・うつ状態・痛み・瘀血の症状を改善する作用があります。
鹹味
『鹹味』とは塩味のことで、痰・咳・喘息・できもの・コブのようなかたいものがある症状を改善する作用があります。
淡味
『淡味』とは、はっきりしない味のことをいいます。
難聴・胃もたれ・めまい・むくみ・下痢などの症状を改善します。
【六味のはたらきと食薬】
六味 | 五臓 | はたらき・効果 | 食薬 |
---|---|---|---|
酸味 | 肝 | ・体を引き締めて漏れを防ぐ ・汗腺を収斂して発汗を抑える ・下痢、尿の出過ぎを抑える ・筋肉を引き締める ・唾液の分泌をよくする |
かりん/杏/烏梅/レモン/ゆず/キウイフルーツ/ザクロ/ライチ/五味子/酢 |
苦味 | 心 | ・余分な水分を排泄する ・余分な熱を取り除く ・デトックス ・精神を安定させる |
苦瓜/オクラ/銀杏/タラの芽/アロエ/茶葉/ターメリック |
甘味 | 脾 | ・筋肉や精神の緊張を取り除く ・緊張を緩和し痛みを止める ・虚弱な体質や体力消耗時に滋養強壮する ・胃腸のはたらきを高める ・氣を補う |
穀類/れんこん/冬瓜/セロリ/もやし/きゅうり/いちじく/蜂蜜/葡萄/豆腐/鮭/アジ |
辛味 | 肺 | ・氣の巡りをよくする ・血行促進する ・体に侵入した邪気を発散する ・体温を上げて発汗を促す |
唐辛子/胡椒/生姜/春菊/みょうが/ニラ/ネギ/紫蘇/薄荷/ニンニク/酒 |
鹹味 | 腎 | ・固くなっているしこり、かたまりを柔らかくし、小さくする ・便を柔らかくし便秘を解消する |
昆布/海苔/くらげ/アサリ/イカ/カニ/豚肉/塩/醤油 |
淡味 | ・尿の出が悪い、むくみを改善 ・消化機能を促進する |
冬瓜/竹葉/ハト麦 |
芳香性の食薬
食薬には性質や味以外にも、その香りに効能があるものがあり、例えば、薄荷・紫蘇・玫瑰花・ジャスミンなどがこれにあたります。
これらの芳香性の食薬には湿を乾燥させる・食欲を増進する・ストレスを解消する・精神を安定させるといったはたらきがあり、煮出したり、温かい状態で摂ることで、効果が得られやすいです。