薬膳のお話・中医学の基礎【八綱弁証】
中医学の弁証(診断)方法はたくさんありますが、そのなかで八綱弁証は表証・裏証・寒証・熱証・虚証・実証・陰証・陽証の8種類の証から病気の判断する最も基本的な方法で、薬膳を考える上でもとても重要です。
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- 中医学に興味がある
- 薬膳初心者
- 薬膳を基本から学びたい
目次
1. 表証と裏証
表証と裏証を用いて、病気の部位の深さや浅さ、病状の軽重、病勢の進行を示します。
表証
表とは、内臓に対し体の表面を示し、皮膚・筋肉・経絡が含まれます。
表証とは病気の初期段階のことをいいます。発病が急性、発病して間もない、病位が浅いなどの特徴があります。
例えば、悪寒・発熱・頭痛・鼻詰まり・鼻水といった初期症状のことをいいます。
裏証
裏とは、体の表面に対し内臓を指し、血脈・骨髄・臓腑が含まれます。
裏証とは例えば風邪による高熱・咳・黄痰や邪気が直接、血脈・骨髄・臓腑に侵入したときに起こる証です。
また、飲食の不節・不潔・偏食や労逸過度、七情が原因で臓腑機能が失調し起こる病気で、範囲が広く、長期にわたるのが特徴です。
2. 寒証と熱証
寒証と熱証を用いて、病気の性質を判断します。
寒証
寒証とは、体の冷え症候群です。寒証には表寒証・裏寒証・虚寒証の3つのタイプがあります。
病証 | 表寒証 | 裏寒証 | 虚寒証 |
---|---|---|---|
原因 | 寒邪の侵入 | 生もの、冷たいものの食べ過ぎ/冷房の効きすぎ | 慢性病/老化/陽虚体質 |
症状 | 悪寒/発熱/頭痛/疼痛/鼻づまり、鼻水/痰希薄/舌苔蒼白 | 腹部の突然の冷え/疼痛/下痢/舌質淡白/舌苔白 | 顔色が蒼白/四肢、腹部、足腰の冷え/疼痛/生理痛/下痢/舌質淡白潤/舌苔白 |
※舌質•••舌の肉質
※舌苔•••舌の表面についているコケのようなもの
熱証
熱証とは、体に熱がある症候群です。寒証には表熱証・裏熱証・虚熱証の3つのタイプがあります。
病証 | 表熱証 | 裏熱証 | 虚熱証 |
---|---|---|---|
原因 | 風、暑、火などの邪気の侵入 | 辛いもの、熱いものの食べ過ぎ/酒の飲み過ぎ/陽盛体質 | 慢性病/発熱病の後期/過度な性生活/更年期障害/陰虚体質 |
症状 | 発熱/発汗/喉の渇き、痛み/舌辺紅/舌苔薄黄 | 身熱/発汗/顔、目が赤い/冷たいものを好む/便秘/舌質紅/舌苔黄 | 熱感/盗汗/ほてり、のぼせ/喉の渇き/尿少/便秘/舌質紅/舌苔少 |
※盗汗•••睡眠中にかく汗
3. 虚証と実証
虚証と実証を用いて、正気と邪気の盛衰を判断します。
虚証
虚証は、正気の不足、臓腑機能の低下・衰退によって現れます。
虚証には、氣虚証・陽虚証・血虚証・陰虚証の4つのタイプがあります。
病証 | 氣虚証 | 陽虚証 | 血虚証 | 陰虚証 |
---|---|---|---|---|
原因 | 臓腑のはたらきが低下/氣虚体質 | 臓腑のはたらきが衰退/陽虚体質 | 血の不足で臓腑組織の営養不足/血虚体質 | 血の不足/津液の消耗、精の不足/陰虚体質 |
症状 | 顔色が黄、白/自汗/息切れ/声が低い/疲労/舌質淡白/舌苔薄 | 顔色が蒼白/自汗/息切れ/動悸/体の冷え/疼痛/生理痛/舌質淡白潤/舌苔白 | 顔色が蒼白/唇色が淡白/めまい/動悸/不眠/体のしびれ/生理不順/舌質淡白 | 午後の発熱/微熱/掌、足の裏が熱い/盗汗/喉の渇き/痩せる/ほてり、のぼせ/尿量が少ない/便秘/舌質紅/舌苔少 |
※自汗•••気温とは関係ない昼間の汗
実証
実証は、臓腑のはたらきは弱くない状態で、正気と邪気の戦いが激しくなることを言います。
実証には、実熱証・実寒証・氣滞証・血瘀証の4つのタイプがあります。
病証 | 実熱証 | 実寒証 | 氣滞証 | 血瘀証 |
---|---|---|---|---|
原因 | 邪気の侵入/陽盛体質 | 生もの、冷たいものの食べ過ぎ/冷房の効きすぎ | ストレスによる氣の停滞/氣滞体質 | 寒邪の侵入/氣滞による血流の停滞/血瘀体質 |
症状 | 発熱/声が高い/息が荒い/便秘/排尿痛 | 悪寒/頭痛/鼻づまり/突然の腹部の冷え/疼痛/下痢 | ため息/うつ状態/精神不安/食欲不振/生理不順 | 顔色、爪色が黒い/疼痛/生理出血のかたまり |
4. 陰証と陽証
表証・裏証・寒証・熱証・虚証・実証の証は、それぞれ陰証と陽証に属しており、この陰証と陽証を八綱弁証の総綱といいます。
- 陰証に属するもの → 裏証・寒証・虚証
- 陽証に属するもの → 表証・熱証・実証