薬膳のお話・中医学の基礎【病因学説】
中医学では病気の原因を『邪気』といいます。また体を病気から防御しようとする『正気』と『邪気』の戦う過程が病気と考えられています。
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- 薬膳初心者
- 薬膳を基本から学びたい人
- 中医学に興味がある人
目次
病因学説とは
すべての病気は発症の原因があるという考え方で、その原因を邪気といいます。
自然の中に存在する私たちは、気候の変化や生活環境の変動、ストレスなど様々な影響を受けますが、普段は平衡な状態を保つようになっています。しかしその平衡状態が崩れると、体に異常な反応が起こり、それを病気としています。
そしてこの病気は、体を防御しようとする正気と邪気の戦いによって発症し、変化、進行していくと考えられています。
【正気】
正気とは、陰陽、気血、臓腑、組織の活動による防衛能力であり、自然環境の変化に対する調節能力。
【邪気】
邪気とは病気を引き起こす原因で、邪気の種類によって、体に侵入するルートがや病気も異なります。
正気が弱ければ病気にかかりやすく、正気が強ければ病気にかかりにくいということになります。
外因・内因・不内外因
中医学では病気の原因を、自然界の邪気が侵入する外因、精神的な変動による内因、その他を不内外因とし、3つに分類しています。
外因
自然界に存在する邪気が皮膚、毛孔、鼻、口から体に侵入して病気を引き起こすこと。よくある原因として六淫邪気というものがありますが、これは六気(万物の成長、発育、熟成に欠かせない気候の6つの変化)の異常や正気不足によって、六気が邪気(風邪、暑邪、火邪、湿邪、燥邪、寒邪)に変化してしまうことをいいます。
風邪の特徴
- 百病之長→多くの病気の原因であるということ
- 上半身を傷める→目や喉の痒み、くしゃみなど顔に現れる症状
- 善行・数変→病気の場所や症状が変化し、進行が早いこと
- 風性主動→風のように症状が移動すること
暑邪の特徴
- 炎熱・熱の上昇・発散→体が熱くなる、顔が赤い、多汗など
- 気・血・津液を傷つける→息切れ、脱力、動悸、喉の渇き、少尿など
- 湿邪と一緒に侵入する→雨がよく降る夏に湿邪と一緒に侵入する
火邪の特徴
- 強い炎熱・熱の上昇・発散→熱の症状以外に、精神を乱す
- 気・津液を傷つける→喉の渇き、少尿、便秘など
- 生風同血→熱により血を消耗し、痙攣や出血を起こす
- 癰腫瘡瘍→かゆみ、にきび、腫れ物など
湿邪の特徴
- 気の巡りが悪くなる→消化機能を傷め、下痢、むくみなど起こす
- 重濁性→頭体が重い、尿の混濁など分泌物が汚れること
- 粘滞性→残便感、皮膚病のじゅくじゅく
- 下向性→下半身のむくみ、腫れ、痛み、おりものなど
燥邪の特徴
- 乾燥性→口鼻喉の渇き、髪、皮膚の乾燥
- 肺を傷つける→肺は乾燥を嫌うため、鼻血や空咳、胸痛が起こる
寒邪の特徴
- 冷えの症状→陽気を傷つけ、腎を傷める
- 凝滞性→気血の流れを渋滞させ、頭痛、胸痛、腹痛、疼痛などが起こる
- 収引性→臓腑、血管、筋肉の痙攣を引き起こす
内因
中医学では人間には怒・喜・憂・思・悲・恐・驚の7つの感情、七情があるとしています。この七情の変動による病気の原因を内因といいます。
七情の特徴
七情にはそれぞれ深く関わる臓器があり、体内で生じる七情は直接臓器に影響を与えます。
また気の昇・降・出・入に異常を与え、病気が生じます。
七情 | 怒 | 喜 | 思(憂) | 悲(憂) | 恐 | 驚 |
---|---|---|---|---|---|---|
気病 | 気上 | 気緩 | 気結 | 気消 | 気下 | 気乱 |
五傷 | 傷肝 | 傷心 | 傷脾 | 傷肺 | 傷腎 | 傷腎心 |
五症 | 顔目が赤い 胸脇脹痛 ため息 |
心悸 発汗 息切れ 集中力低下 |
食欲不振 胃もたれ 吐き気 腹部の張り |
無気力 声が低い |
不安 驚きやすい 頻尿 便の漏れ |
緊張 精神不安 動悸 頻尿 |
不内外因
不内外因は外因と内因以外の病気や失調の原因のこと。
飲食
- 暴飲暴食
- 不衛生な飲食
- 偏食
労逸過度
『労』は過労、『逸』は安逸(何もせず、ぶらぶら過ごすこと)の意味。
- 肉体の過労
- 精神の過労
- 過度な性生活
- 安逸により気の巡りの滞り
瘀血
臓器機能の失調、怪我など邪気が原因で血の流れが滞りがちになることを血瘀状態といい、これにより生じるちの塊を瘀血といいます。
- 疼痛→針で刺すような痛み
- 紫紺→黒っぽい色で顔や爪、舌が青黒くなったり、黒い斑点ができる
- 腫塊→腫れ物や血のかたまり
- 出血→皮下出血、吐血、血尿、血便、内臓出血、生理不順など
痰飲
体内の水分代謝障害により生じる。
- 痰→濃い唾のようなもの
- 飲→薄いよだれのようなもの
まとめ
病気に原因である邪気には外因、内因、不内外因の3つがあります。
中医学では邪気に打ち勝つには、正気を強く保つことが大切!薬膳料理で正気を養っていきましょう!